ブエノスアイレスからポーランドに向かうロードムービー「家へ帰ろう」を見てきた

ポーランド

ポーランド愛伝道師のポラ子です。

「ポーランドって文字を発見」と職場の同僚が教えてくれた映画「家へ帰ろう」をシネスイッチ銀座で見て来ました。この同僚の情報を元にアメブロで9/28に紹介しました。

12月公開ということで楽しみにしていました。

アルゼンチンのパブロ・ソラルス監督作品です。
邦題「家へ帰ろう」公式サイト
原題「EL ULTIMO TRAJE」
英題「The Last Suit」

あらすじや動画はコチラ
一部引用してみます。

ブエノスアイレスに住む88歳の仕立屋アブラハムが老人ホームに入れられる前夜に家出し、マドリッド、パリを経由して、70年以上会っていないポーランドに住む命の恩人に最後に仕立てたスーツを届けに行くというあらすじだ。

実際に見てみて

冒頭の孫とのやりとりに、まずニヤリ。

ちゃっかりしてる孫を「だからお前が好きなんだ」と。負け惜しみなのか本心か、なかなかのねじれ具合を感じるアブラハムじいさん。

前半の飛行機のやりとりが最高だった。あれは使える。その後も

  • 飛行機で知り合ったレオ。
  • マドリードのホテルの女主人
  • 娘とのやりとり
  • 鉄道で出会った女性
  • 病院の看護師

など、旅の途中のふとした出会いが綴られていく。

その間にポーランドに向かう理由となる過去の映像が挿入される。

ドイツの地を踏むことも、故郷であるはずのポーランドという名すら口にしたがらないアブラハムじいさん。目的地に近づくにつれ、偏見が次第にほどけていくが、同時に蘇るつらい過去の記憶に戸惑いを見せていく。

 

ポラ子と名乗るようになり、暗い歴史のイメージを払拭したくて普段はお気楽極楽な投稿をしているが、ポーランドに関わる限り避けて通れないのも事実。ポーランドの人にすれば、そうじゃない取り上げ方をして欲しいと思うかもしれないが、やはり無視出来ない話題なのだ。そう、それはホロコーストだ。

それが戦争映画としてでなく、娘たちに老人ホームに入れられる前夜に、かつての約束を果たしにポーランドを目指すことになる爺さんを通しての「終活」とも言える視点で描かれる。映画は静かに進んでいくが、毒気がありつつも笑いを誘うアブラハムじいさんの発する言葉やふるまいに、なんとなく出会った人が協力していく。

人生を振り返り、やり残したこととして、この旅、即ち約束が位置付けられていることで、重要性と深刻さが浮き彫りになっている。

約束を果たすにも、これだけの時間がじいさんには必要だったのだ。そうでなければ向き合えないだろう。

ラストは見て確かめていただきたいが、ポーランド語で「青い(Niebieski)」が聞き取れたことが、より沁みたように思う。

直接には戦争を描写していないが、背景を描くことで悲しみの過去の現実の輪郭が浮き彫りになる映画だった。

パンフには林家木久扇師匠の「静かなスケッチの反戦映画だ」との言葉が載っているが、まさにそんな印象を受けた。

ラスト間際だったか、じいさんが顔をくしゃっとするシーンがる。偏屈なじいさんを、その偏屈さも頑固さも魅力に感じさせるようなアブラハムじいさんの演技が良かった。

脇役の旅の途中で出会う人も味わいがあった。
派手さはない静かな映画だが、これほどまでに影を落とす過去と、それを抱えながら生きてきたじいさんの、日常のユーモアや頑固さというバランスに人生のリアルを感じられた。

映画館にはイラストレーターりょうこさんの映画日記が飾られていました。

ラストには鼻をすする音が聞こえてきました。
かくいうポラ子もじわーーーっときました。マスクしてて良かったです。

金曜日だったので950円で見られました。是非観に行ってみてくださいね。

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