ポーランド人イェジー・コシンスキ原作の超問題作「異端の鳥」を観てきた!

ポーランド

着物とポーランド愛伝道師のポラ子です。

今日は、ポーランド人イェジー・コシンスキ原作超問題作「異端の鳥」を観てきました。

 

よくネットの記事で見ていたのはこのビジュアル。

それとともに、ヴェネツィア映画祭で途中退出者続出と言う触れ込みがずっと頭に残っていて。

と同時に、最後まで見た人はスタンディングオベーションだったというのです。

 

原作がポーランド人だからポラ子としては行かねばなるまい。

覚悟して見に行きました。

 

 

原題「The Painted Bird」

日本版の予告はこちらです。※予告だけでも苦手な方は無理かもしれません。

私はこういうテーマというか、答えの出ない問題を描く映画は好きです。

が! それにしても衝撃が後から後から続きます。

 

まず、モノクロ映画だということについて考えます。

 

明度しか無い世界。

それは即ち、光と影を映し出す。

人間の心の光と闇、歴史の明と暗。

これが浮き彫りになる訳です。

色がないだけに、視覚情報は抑えられグロさは幾分軽減されるものの、その分、人間の行為がフューチャーされ、残虐性は増すようにすら感じられました。

とにかく、異端、異質な者への人間の態度が描かれ、それをずーーっと突きつけられる映画です。おぞましいほどの排除パワーが襲ってきます(軽口も出ないほどw)。

 

異端とは正統から外れること。

正統から外れた物は排除していいという共通認識。

 

例え滑稽な保身や幼稚なプライドのためであろうと、排除する側には理由がある。
その人や集団なりに存続させるという大義がある。

しかし、大義は必ずしも正義ではない。

それなのに一人の命を奪ってでも、人の尊厳を踏みにじってでも守る価値があると信じているから恐ろしい。

 

正義を振りかざす集団、これほど恐ろしいものもない。

それがナチスであれ、村人であれ。

 

この映画で少年を見逃し助けるのは、ナチスの兵士であるということ。

ナチスという大きな集団の中にあって異端になるかもしれないのに。
異端は異端を知るということか?

ナチスの中の異端は人としては正統であるという皮肉

このことからも、異端の定義は難しいのだ。
正統とは? 異端とは?

 

人々はその時代、集団の中で異端となる事を酷く恐れる。
その恐怖が裏返しとなり、異端をひたすらに攻撃し排除する大きな力になってしまう。

 

こんな事をつらつらと感じました。

あとはどうやって撮ってるの????

というシーン(カラス、猫など)もあり。

 

 

以下は具体的にストーリーを書いていきます。

映画中では人物名のみが字幕で出ます。その後のコピーはポラ子オリジナルです。
時にネタバレになりますので、ご自身の判断でお読みくださいね。

※思い出しながら書いているため、映画と違うところがあるかもしれません。
衝撃映像の詳細を知りたい方は、一番下に書きましたので、猛者はお読みくださいませ。

 

マルタ:いきなりの幕開け

息づかいの音と共に、イタチ?を抱え森の中を少年が逃げるシーンで始まります。

そこへ別の少年が体当たりして、逃げていた少年は倒れ込みます。

そこでまず衝撃映像その1が。

後から考えるに、この冒頭のシーンは今後の少年を暗示するようです。

つまり、
助けるということ。
助ける気持ちはあったのに、結果は無残に終わることがあるということ。

あてどなく彷徨いながら、この事を身を以て体験する少年の未来を示唆しているかのように思えました。

〜場面転換〜

どうやらおばさんの家に身を寄せているらしい主人公。

イタチの件をそのおばさんに
「自業自得」
「靴を磨きなさい。靴が汚れてると半人前」

と言われます。この靴を磨くという教えが後に効いてきます。

おばさんの世話になりながらも、やはり本当の家に帰りたいのか、両親に会いたいのか、少年は小舟の帆に「迎えにきて」と書いて川に流します。

ある日の事、足を洗面器で洗っていたおばさん。
そのまま朝が来てもピクリとも動きません。

朝になり目覚めた少年は、物音のしないおばさんの部屋の様子を見に行きますが、寝てると思ったのか再びベッドにもぐります。

夜に亡くなっていた事に気付き(遅いだろ!)、驚きのあまり持っていたランタンを落としてしまい火の手が上がります。あっけなく生活の場が消え去り、居場所が無くなった少年はさまよう事になります。

村人(ここがマルタの村の人々か別の村か断定できず)から散々な目にあい、川におち流木につかまり流れていく少年。(←他の人は次の章のラストとして書いてるのもありました。見た日に書いていないので記憶が曖昧です)

確か自分で流した小舟が流れて行ったシーンがあったような気がします。

それが印象的でした。

少年の願いは届かないのか? と見てる側は不安になりました。

 

オルガ:恐怖の始まり

少年はある村に流れつきます。

その村の呪術師兼、医者?のような老婆オルガに「お前は吸血鬼」と言われるのです。

なら拾うなよ!と思わなくもないのですが(笑)、そこで拾われ少年は手伝うようになります。

ある日少年が病になり、その治療として首まで地中に埋められるのです(冒頭の画像参照)。そこからは衝撃映像その2が!

 

ミレル:嫉妬にからめとられた男

地中に埋められていた少年は、ある男に助けられます。

拾われるなり「不幸を呼ぶ」と言われるもののなんとか厄介になります。

 

そこでは主人とその奥さんと、使用人の三人が暮らしていました。

この主人の膝にじゃれつき、喉を鳴らしながら顔をこすりつける猫。

猫には慕われているけれど、眼光鋭いのです、この主人。何かありそう。

この予感はあたります。ここでは主人の嫉妬という負の感情が、壮絶に描かれます。
はい、お察しの通り、衝撃映像その3です。

少年は使用人にある物を渡し、森の中へ。また、さまようことになります。

 

レッフとルドミラ:タイトルの意味がわかる

鳥をたくさん飼う男レッフに拾われます。

 

ここで原題の「ペイントされた鳥」と繋がります。そして邦題が異端の鳥になったのもうなづけます。

ある一羽の鳥の羽にペンキを塗り、空高く放すレッフ。

 

しばらくレッフと少年は空を見上げます。

空には仲間の鳥が飛んでいるのですが〝塗られた鳥〟を異質な物として排除しようと執拗に追い回すのです。

つまり〝塗られた鳥〟は鳥の群れの中では異端な存在。

そして攻撃された〝塗られた鳥〟はツーーーーっと空から落ちてきます。

それを拾う少年。

自然界では異端は排除される運命にあるもの。

 

塗られたという見た目が変わっただけで、本質は変わっていないのに排除される鳥。

見た目が違うということは、外敵から狙われやすい。だからこそ群れから排除しなければならない。が排除する側の論理。

少年をはっきりユダヤ人とは言わないけれど、家族の写真を見るシーンでは明らかに父親はユダヤ人の出立ちです。

まるで塗られた鳥のように行く先々で扱われる少年。

ある時、レッフの元に裸で鳥籠(藁で編んだ籠)をもった女性が現れます。

 

側にいた少年にレッフは「ここで待ってろ」と言い残し、2人でお楽しみに。

場面は変わり、この女性が青年たちを誘惑しています。

 

それが青年の母親にバレ、リンチをうける女性。

 

ここで衝撃その4が。

レッフが衝撃映像その4にショックを受け自殺をするのですが、その時の少年の行動がまた、なんとも。

世話になった恩義なのか、はたまた悲しみの表現なのか。

 

ハンス:見逃す男

列車で移送されるユダヤ人。車両の窓を破壊し、隙間から地面にダイブして逃げる人々。

それに気付いたナチの兵士が容赦なく銃殺していく。

その死体の中を少年は歩いています。持ち主を失ったトランクを開け、中身を取り出しパンをむさぼる少年。そんな描写が続き、あるシーンでとうとう兵士に見つかってしまいます。

 

線路をしばらく歩かされ、いつしか突き当たりに。ここが死に場所かと思うものの、ナチスの兵士ハンスが逃がしてくれる事に。

ハンスが顎をしゃくって無言で「行け」と合図するも、背後から撃たれると警戒しているのかなかなか逃げない少年。

やっと歩き出す少年の背後で偽装の銃声がします。

 

後から考えると、この時で少年はある意味死んだのかも知れません。

この後から少年はただの弱者では無くなっていくからです。

 

司祭とガルボス:善人の顔をしたとんでも野郎

(余談ですが、この章での驚きはハーベイ・カイテルが出演していた事!)

話を戻しまして、1章で書いた「靴を磨く」という教えを実行し命拾いをする少年。司祭に助けられます。ただこの司祭は病気なのです。嫌な咳をしているのです。

とうとう口元を押さえたハンカチから血が!

そこで少年は信者のガルボスという男の世話になる事になります。

(余談その2 ガルボス役はジュリアン・サンズ!『眺めのいい部屋』で見てたはず〜 懐かしい)

 

ところが、ところがこのガルボスおっさん、とんでもない人で。

ズボンのファスナーを上げながら部屋を出ていくんですね、その背後で少年が泣いている訳なんです。はい、そういうことでございます。

ある日、牛を連れた少年が森を歩いていると、落ち葉の中にナイフを見つけ拾います。

その近くには、まるで大きな穴のような防空壕のようなものがあり、少年は覗き込みます。
すると、ネズミがビーーーーッシリ這っていました。

これでもウ〜ってなるけど、これは衝撃映像の序章です、フリですね。

ある時、少年がナイフを持っていることがガルボスに見つかってしまいます。

「どこで拾った」と詰問され、森に案内する少年。

ここで衝撃その5がーーー。

再び教会のお世話になるもミサの最中にミスをし、少年は肥溜に投げ入れられてしまうのです。

 

ラビーナ

湖?に張った氷が割れ真冬の水に浸かってしまった少年は、ラビーナという女性に助けられます。

このラビーナが曲者で、どうやら色情の気がある様子。

少年も求められますが、ある時応じられなかったのです。

その翌日にラビーナが取った行動が衝撃映像その6。

 

ただ、少年もしっかりやり返します。

 

ミートカ

ロシア兵のミートカのテントに身を寄せている少年。

制服を与えられた少年が、ミートカに背中を向けて着替えるシーンがあります。映し出された少年の背中は傷だらけなんですね。それを見たミートカは何かを察したのでしょう、ブーツも少年に与えます。

この時の楊枝?を咥えたまま何も言わず、顎をしゃくるだけで「ほらやるよ」と伝えるシーンが好きです。ミートカがカッコいい。

こんな風に思えるシーンはここくらい。

この後にミートカは「目には目を」を少年に教え込んでいきます。

 

ニコデムとヨスカ

ミートカとこの章あたりから衝撃映像が少なくなってきて、脳が安心したのか、これまでの衝撃で疲弊したのか分かりませんが、なんとなんと!眠くなってきました。

ここまで数々の衝撃を耐え、やっとスタンディングオベーションがあったというラストに向かうのに〜。なんたる不覚。

少年がミートカからもらった銃で○○のエピソードとか、父親が名乗り出てきてからの展開は覚えてますが、ストーリーを書くほどクリアではありません。見終わってこの章に辿りつくまでかなり日も空いてしまいましたし。

ま、ここは書かない方がいいでしょうしね、

ラストシーンはしっかり見ました。でも大事な事は見逃したようです(笑)。

一番下にキーワードだけ書いておきます。

 

 

映画についての情報としては

こちらのサイトを読むと順撮りしていることがわかります。

 

ライムスター宇多丸さんがこの映画について語っています。
よかったらどうぞ。

 

 

 

 

 

以下需要ないと思いますが、衝撃映像の記録として。
ご自身の判断でお読みくださいね。

衝撃映像その1
イタチ?フェレット?に液体がかけられ、火が放たれます。苦しげに回りながら走るイタチ。黒くなり動きが止まります。

衝撃映像その2
首まで埋まっている少年の周りにカラスが集まってきます。少年が一度声を荒げて逃げるも、また舞い戻り少年の頭を何羽ものカラスが取り囲み突つきます。何度も突きます。

衝撃映像その3
妻と使用人の浮気を疑った主人は拾ってきた?猫を飼い猫の前に放ちます。すると交尾を始め、それをみて激昂した主人がテーブルをひっくり返し使用人の目をスプーンだかフォークでえぐり出します。

翌日、木にもたれかかっている失意のドン底の男に、拾った男の目を渡し、少年は森に消えて行きます。

衝撃映像その4
リンチされた女性は女性器にガラス瓶を入れられ、蹴りあげられます(ガラス片を脳内で想像してしまい、く、苦しい)。勿論そのまま帰らぬ人に。遺体を家に持ち帰ったレッフは首を釣って自殺。そのレッフの体にしがみつく少年。それは死なないでとの思いでしがみついたというよりは、完全に自殺幇助。

衝撃映像その5
ナイフを拾った現場に案内するシーン。
逃げないようにお腹を縄で縛られ、リードのようにガルボスと繋がっている(ガルボスが手に縄を持っていたかな?)少年。例のネズミの穴を少年は通り越し、ガルボスが落下するように巧妙に行動します。

一度ネズミを見ているのでやはり衝撃映像その4と一緒で脳内で想像してしまいます。直接的に映画では描いてはいません。

衝撃映像その6
ラビーナが腹いせに少年に獣姦する姿を見せるのです。映像としてはちょっと説得力ないものだけれど、もう獣姦というセンセーショナルさで衝撃マックス!

その報復として少年は羊の頭をナビーナの部屋に投げ入れます。

 

ラストシーンのキーワード
Joska

 

 

この記事、最初に書いたのは12/6。
書き終わりが12/19。アハ、アハハハハ〜。

筆も進まなくなるってもんです、お読みいただきありがとうございます。

 

コメント